懐中時計から腕時計へ 3 リストレット小史

 しかしながら、英国軍は保守的であり、政府の調達として腕時計を大量に発注することはありませんでした。そのかわり、英国の軍部は1917年にリストレットを少量生産してテストし始めました。その全てのモデルは、種々のメーカーから調達したメーカ名表示のない15石の機械を用い、黒のエナメル文字盤と蛍光塗料の数字を採用していました。いくつかの腕時計ははめ込み式の裏蓋を用いていましたが、気密性が悪いために不採用となりました。 ねじ込み式裏蓋のモデルはもっと気密性が良いと考えられました。

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 1917年に米国が第一次世界大戦に参戦すると同時に、米国のSignal Corpsは下図のような
ゼニス(Zenith)製のリストレットを出しました。ゼニスの名前は1911年になって初めて文字盤に書かれましたが、当時のゼニス社は主に政府の軍関連との契約取引を行っていました。
この針金の取手のある時計の場合、文字盤の12時の直下にSignal Corps、秒針の上にZenith の表示があります。

 続く数十年の間に腕時計の技術革新が進みました。
1920年台に防水・防塵のケースが開発され、 衝撃吸収機構付きのテンプが考案されました。 そして壊れやすいガラスはプラスチックの風防に先ず置き換えられ、次に人造のサファイアガラスになりました。バンドを付ける取手の形状も初期の針金型から今日普及している形状に進化しました。欠けたり割れたりする陶製の文字盤は金属ベースのものに変わりました。
腕時計の大きさの機械にも複雑時計の機構が取り入れられました。パリのカルチエに続く多くのデザイナーによって、丸い懐中時計のデザインとは異なる四角や長方形等々の多様なデザインが見出されました。

 リストレットの呼称がいつから使われなくなったのかはわかりません。1930年代初頭にインドの輸入商がオメガのカタログにこの古風な言葉を用いています。この呼称はもはや使われなくなりましたが、リストレットの伝説は今も生きています。
恐らくダーウインの進化論のように、第一次世界大戦中にこの伝説が形成されたのです。

 英国軍にはずっと懐中時計を好む気風がありました。
1940年代になってさえ、人によっては2台の時計を持つのが普通でありました: すなわち、一台のクロノグラフ付き腕時計ではなくて、一台のクロノグラフ専用 懐中時計ともう一台の普通の腕時計の二台です。

軍部の一部が腕時計をなかなか認知しなかったとはいえ、第一次世界大戦により腕時計は幼少期から発展期へと飛躍して行きました。社会的な波及効果は甚大でした。
宝飾品や奇抜な品物と考えられていた物が、機能的な物となったのです。 かつては婦人の品と考えられていた品が何百万もの若い男性に使われるようになりました。
繊細に作り込まれた計測器は、過酷な状況下でテストされ使えるようになりました。腕時計の時代が幕開けたのです。

ACKNOWLEDGEMENTS

We thank Mr.Michael Freidberg and TIME ZONE for the kind permission to translate the original article to Japanese and to post its Japanese version here.
The copyright of the original English article belongs to TIME ZONE.

The following section.shows the original acknowledgements and copyright notice from
Mr.Michael Freidberg and TIME ZONE.


Copyright 2000 All Rights Reserved

Michael Friedberg/PastTime

 

Special thanks to Konrad Knirim, who provided the images of the WWI soldiers, the pocket watch on a strap, and the Girard Perregaux wristlets from his book, Militaeruhren, Die Uhren der deutschen Streitkrafefte 1870 bis 1990, and  to Ziggy Wesolowski who provided the images of the Mesh-Guard, the Military Luminous Watch advertisement, and  the Mappin and Zenith wristlets from his book A Concise Guide to Military Timepieces, 1880-1990.  The image of the early Rolex wristlet is courtesy of James Dowling.

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