懐中時計から腕時計へ 2 リストレット小史

 最後の埋め込み型を除いて、時計には取手が必要です。時計のケースには、上図のハミルトンのように小さな取手が付いていたり、右図のように弓形の丈夫な針金が付いていたりしました。

 第一次世界大戦を通じて腕時計の地位は固まり、腕時計は人気を得て成長して行きました。当初、軍の調達将校は、腕時計は軍用には弱すぎると考えていました。ケースは頑丈でなく、表面のガラスは割れ易かったのです。懐中時計は何十年にも渡って良く動きましたので、敢えて時計を換える理由はみつからなかったのです。

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 1912年には多くの米国時計メーカーから 
ブレスレットを付けた小型の婦人用ペンダント時計
が売り出されました。右はハミルトンの1912年カタログの図です。
 当時、腕に時計を付ける方法としては、三種類の方法がありました。一つはハミルトンのように薄い金属のブレスレットに付けるもの、下の1913年頃のドイツのカタログにあるように革のバンドを両側から付けるものや、革バンドの中に埋め込むタイプがありました。

 やがて、強いケースと見易い文字盤が考案されました。左の軍用蛍光時計の広告では、蛍光文字の文字盤と、埃やどろに強い頑強なねじ込み式ケースが強調されています。ボーゲルケース(Borgel case)と呼ばれるこのケースには裏面に開口部が無く、リューズを外して表面のべセルのねじ込みを回して表から開ける構造となっています。この時計にはフルハンターのカバーが付いていることにも注目ください。
 
 第一次世界大戦中には各兵士が自身で時計を購入していましたが、続く数十年の間は将校や兵士の時計は軍によってまとめて調達されました。
 IWC (International Watch Company)の最初の腕時計は1914に製造され、初期の
モデルは右図のように
古典的な軍用リストレットの

 初期の腕時計の多くにはガラスを保護するカバーがついてました。左のメッシュガードのような金属スクリーンが、多用されました(時にはアクセサリーとして使われていました)。このようなメッシュのある時計はトレンチウォッチ(塹壕時計)と呼ばれていました。この時代の腕時計には、19世紀の2重蓋の懐中時計のように金属の蓋の付いた時計もありました。中には中心を開孔したデミハンター型蓋の付いた腕時計もありました。

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 しかし、兵士達はその利便性によりリストレットを使い始めました。その結果、より良い時計への技術革新が促されたのです。

因みに、デミハンター型はナポレオンが戦闘中に蓋を開け閉めするのに閉口して、刀で蓋を切ったのが最初との逸話があります。

形でした。 この時計は、当時の典型例ですが、銀製ケース、陶製文字盤、蛍光文字、1890年代に女性のペンダント時計用に設計された機械を用いてます。当時のリストレットはオメガ、ロンジン等のメーカーによらず、ほぼこの形式でした。
 この時期のリストレットの多くにはメーカ名の記載がなく、中でも機械について製造元を同定するのは困難です。
 下図の High Class Watch Company製Field Serviceの時計は、文字盤にRoyal Navyの表示がありますので、英国海軍向けの時計だと思われます。

しばしば、商店の名前が文字盤に記載されました。右のMappin社のCampaignモデルはその一例で、英国向けの時計です。  
このMappin の15石の機械にはメーカ名の記載はありませんが、シリアル番号よりロンジンの製品と判明しています。