戻る

100日 時計

100日時計は、一度ぜんまいを巻くと100日動くのでそう呼ばれます。
 歴史的には19世紀末のドイツで製品化され、1945年以降に日本でも作られるようになったとされています。海外では1年動くのものが多いので400-day clockとか、一年の内、一回だけなにかの記念日にぜんまいを巻けばよいので、記念日時計(Anniversary clock)とか呼ばれています。
 関連する特許は1793年のLeslie (イギリス)から、1841 Crane(USA),1852 Terry (USA), 1880 Harder (ドイツ)にまで遡ります。 19世紀末にHarderの機構を改良してドイツの数社で400-day時計の生産が始まり、1986まで生産されていたようです [1]。

この時計は東京のNisshin ClockのNew Masterという機種で、恐らく1945-1960の時計だと思います(ご存知の方はメール下さい!)。
一般の400-dayはドーム型のガラスカバーの中に入っておりますが、本機は行灯型のガラスカバーの中に機械が収まっています。このタイプの時計では比較的珍しいデザインです。

右図の頂点から細い金属の糸バネを使って振子を吊るしています。 振り子を振らすのではなくて回転するようにし、バネが捻れる力を使って振子を回転させ、その回転を使って脱進する仕組みです。
見ているとフーコーの振り子のようにゆっくり振子が回転して時々カチと音がして針が進みます。
せからしくないので癒し系の趣があります。

戻る

左の図は、糸バネの回転運動を脱進器に変換しているところです。糸バネにつけたバーが回転すると(赤矢印)、このバーに挟まれた針金が左右に動きます。針金を脱進器の軸に固定することにより、この左右の動きを軸の正逆回転に変換して脱進します(緑色の矢印)。
 時間の緩急調節は左下図のネジを回して頂点と振子の距離を変えて調整します。
図中の下にある凹部は持ち運びするときに糸バネを傷めないように振子を固定する仕掛けです。振動がある時には凹部を上に持ち上げて振子を持ち上げた状態で固定します。
 この他、頂点と振子の関係が重力に対して垂直になるよう設置の水平・垂直調整が大切です。この位置の制限があるため置時計として使われ、懐中時計には使われません。

 この機械のすごいところは、重い振子を吊るしているので重力の影響を受け難く、僅かの力で時計を動かせることです。そのため1年もの長期にわたり時計を動かし続けることが可能となったのです。この機構を考えた人は偉大ですね。
 

参考文献: [1] Peter Wotton "Anniversary Clocks" Shire Publications Ltd UK

回転振子

頂点

ぜんまい

バー

脱進用針

脱進用軸

凹部

緩急調整ネジ

回転振子