Elginの天文観測所 Timed to the Stars 

天文台の設立
 鉄道網の発達に伴い、米国では鉄道事故を防ぐために正確な時間管理が必要となりました。
地方毎に異なっていた時間を1880年に4つのタイムゾーンに統一すると共に、 1908年にはセオドアルーズベルト大統領の下で標準局が中心となって時計の時間精度向上プログラムが策定されました
そのころ大手であったElginは、時間精度向上のために天文観測所を自社で1910年に設立しました。 場所は第一工場の東の丘の上でした。(現存しております)

Elginの時間計測
 天文台の望遠鏡を使って、星が子午線を横切る時間を測ります。この時、この建屋内にある星用の時計(No.220)を用いて時間を記録し、その時計と実際に星が横切る時間の差を補正して行きます。この星用時計に合わせた標準時時計(No.224)がElginの標準時を示します。この2台の時計は可能な限り正確である必要がありますので、大変厳密に管理されていました。
 先ず、温度誤差を少なくするために部屋の温度は27℃に保たれていました。57個の電球を用いて温度を保つように制御しましたので温度の変動は0.1℃以下に保たれました。振動を避けるため時計は固い地盤に達する20mものコンクリート塊の上に置かれました。また、時計は気密封止され、気圧を一定に保つようにしました。1mmHgの気圧変動で一日0.018秒ずれることを嫌ったのです。
 これらの1910年当時最も正確な時計を用いて、
10個以上の星について星が子午線を横切る時間を測って平均し、1/100秒単位で時計を補正しました。これにより、標準時計は1/10秒未満の誤差しかありませんでした。 現代では天体の運行よりも正確な原子時計に変わりましたが、当時最も正確な時刻を実現していました。

Homeへ戻る

戻る

出典:
1)  SCHOOL DISTRICT U-46PLANETARIUM/ OBSERVATORY
    (御協力頂きました館長のDr. Gary Kutina氏に感謝致します)
2)  Post Cards from Past A Brief History of Elgin Illinois
 Elginは自社で天文台まで造った唯一の時計メーカーです。星により時間を測るなんて
なんとも面白い話なので紹介いたします。 御覧下さい。

戻る

Elgin天文観測所 *2 

 Elginでは、電信器のようにして天文台の標準時時計のチクタク音が工場で聞けるようにしていました。工場内で時計を調整する時にこのチクタク音に同期するようにし、時計の精度を確保したのです。 また、Elginの天文台はシカゴのラジオ局や駅(Union Railroad Station)に標準時を届ける業務も行っていました。

星用時計220と標準時時計224
床に温度調整用電球が見えます。 *1
標準時時計224 *1

 Elginは、この天文台を精度の象徴としてTimed to the Starsのコピーで積極的に宣伝して行きます。1939年にニューヨークで開催された世界博覧会では天文台の形をした展示館を造り、人々に時計の正確さをアピールしました。
また、Lord Elgin、Lady Elginについて、Elgin天文台で精度検定を行って保証を付け、文字通り星で時間を決めること(timed to the stars)により、 時計の精度を宣伝しました。

 1950年代には、計時技術の進歩により天文台のような標準時は使われなくなりました。1960年にElgin天文台は地域の教育機関であるSchool District U-46に寄贈されました。現在は教育用プラネタリウムとして使われています。

1939年NY:世界博覧会のElgin舘 *2 

つぎへ(Egin市)